
プラモデル制作においてよく耳にする「サーフェイサー(通称サフ)」。使ったことはあるけれど、「なぜ必要なのか」「どう使えば効果的なのか」が曖昧なままの方も多いかもしれません。
しかしサーフェイサーは、塗装前の下地処理として非常に重要な工程。小傷や表面の粗を可視化し、塗料の定着性を高めるなど、完成度に直結する役割を担います。
本記事では、以下の点について解説をします。
- サーフェイサーの基礎知識
- 適切な選び方
- 使用手順
- よくある失敗と対策
塗装の仕上がりをワンランク引き上げたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
サーフェイサーとは?その役割と意味
サーフェイサー(通称サフ)とは、塗装前にプラモデルの表面へ吹き付ける下地処理用の塗料です。主にラッカー系や水性タイプがあり、スプレーやエアブラシを使って塗装します。
サーフェイサーの主な役割は、以下の3つです。
- 微細なキズやヒケの視認性向上
- 塗料の定着性向上
- 下地色の統一と透け防止
サーフェイサーを吹き付けることで、素地のままでは見逃しがちな微細なキズや、パテ埋めの処理漏れが明確になり、事前の修正がしやすくなります。
また、
し、仕上がった塗膜が剥がれにくくなります。特に、ツルツルとしたプラスチック表面には、サーフェイサーが接着の足がかりとなり、塗装の定着をサポートします。さらに、異なる色や素材のパーツを均一な下地色で覆うことで、上塗りの発色が安定し、色ムラや透けの発生を防ぐことができます。こうした下地処理を行うことで、最終的な塗装の質感が格段に向上します。
このように、サーフェイサー処理を施すかどうかで、完成後の見た目や仕上がりに大きな差が生まれます。作品のクオリティを一段高めたい場合には、欠かせないプロセスと言えます。
サーフェイサーの種類と選び方
サーフェイサーにはいくつかのタイプがあり、使用目的や塗装環境、道具に応じて適切なものを選ぶことが重要です。
種類別の特徴
種類 | 特徴 | 向いている人・用途 |
---|---|---|
ラッカー系 | 乾燥が早く、下地への密着性が高い。 模型用として最も一般的。 | 仕上がりを重視したい方 |
水性タイプ | 溶剤臭が少なく、室内作業でも扱いやすい。 安全性が高い。 | 換気が難しい環境や、安全性を重視する方 |
瓶タイプ (エアブラシ用) | エアブラシ専用の原液タイプで、シンナーで希釈して使用。 コスパが良く、大量に使う場合に向く。 | エアブラシ使用者、コスパ重視の方 |
スプレータイプ | 道具不要でそのまま使える。 手軽で扱いやすく、広い面にも均一に塗布可能。 | 初心者や時短で作業したい方 |
色別の用途と特徴
色 | 特徴・用途 | 向いている塗装例 |
---|---|---|
グレー | 最もスタンダードで汎用性が高い下地色。 キズやヒケが見えやすく、発色も安定。 迷ったときの基本色。 | 全般、色選びに迷ったとき |
ホワイト | 明るい色やパステルカラーなど、発色の弱い塗料を鮮やかに見せたい場合に適している。 暗い下地だと色が沈むため注意。 | 白系、パステル系、明るい色 |
ブラック | メタリック系や陰影塗装の下地に最適。 光を吸収しやすいため、色に深みを与える効果がある。 | メタリックカラー、黒立ち上げ、シャドウ塗装 |
イエロー | レッドやオレンジなど暖色系の発色を補強。 グレーでは沈む色に対して効果的な中間色として使用される。 | レッド、オレンジ、暖色系全般 |
ピンク | レッド系をより鮮やかに見せたいときに使用。 赤の発色を明るく引き立てる。 | 鮮やかな赤、ピンク系塗装 |
ブルー | 青や紫など寒色系の発色をサポート。 やや落ち着いた、クールな印象の仕上がりに。 | ブルー、パープル、寒色系 |
シルバー | メタリック塗装やキャンディ塗装の下地に使用。 光を反射しやすく、透明塗料と組み合わせることで高い光沢感を演出できる。 | メタリック塗装、キャンディ塗装 |
初心者には、扱いやすい「スプレータイプのグレー」がおすすめです!
サーフェイサーを吹くタイミングとコツ
サーフェイサーの使用タイミングは、基本的に「表面処理(ヤスリがけや合わせ目消し)」がすべて完了した後、塗装工程に入る直前が適切です。
特に、パテによる埋め処理やキズの修正を行った箇所には、サーフェイサーを吹き付けることで仕上がり状態を視覚的に確認できます。下地が均一な色になることで、処理の甘さや細かな凹みが浮き彫りになり、再調整の必要性を判断しやすくなります。
この「可視化」の工程を挟むことで、
ため、丁寧な下地作りを心がけたい方には欠かせないステップです。サーフェイサーの使い方【初心者向けステップガイド】
サーフェイサーの効果を最大限に引き出すためには、正しい手順を踏むことが重要です。以下は初心者の方でも実践しやすい基本的なステップです。
- 下準備(洗浄・脱脂)
- 固定する
- サーフェイサーを吹き付ける
- 乾燥させる
下準備(洗浄・脱脂)
塗布前には、必ずパーツの洗浄と脱脂を行いましょう。
表面に皮脂やホコリが残っていると、サーフェイサーや塗料の密着性が低下します。
- 中性洗剤を使ってしっかり洗浄
無水エタノールを使用して脱脂処理を行うのも効果的です。
固定する
吹き付け作業中に手で触れてしまうと、塗膜にムラが出る原因となります。
塗装用のクリップ(持ち手)や持ち棒を使い、しっかりとパーツを固定しましょう。
サーフェイサーを吹き付ける
塗布は「薄く、数回に分けて」が基本です。
一度で厚塗りしようとすると、ムラや垂れの原因になります。
サーフェイスの吹き方の違い
- スプレータイプ:缶をパーツから約20cm離し、軽くスプレーするように吹きつけます。 になります。
- エアブラシ用(瓶タイプ):指定の濃度に希釈し、一定の距離と速度でまんべんなく吹き付けます。特に希釈率と空気圧の調整が仕上がりに影響します。
乾燥させる
塗布後はしっかりと乾燥させます。
- 表面乾燥はおおよそ30分〜1時間程度
その後、数時間〜半日ほど放置すると安心して次工程(塗装や修正)に移れます。
よくある失敗とその対処法
サーフェイサーは下地処理に欠かせない工程ですが、慣れないうちは思わぬ失敗もつきものです。以下に、よくあるトラブルとその対策をまとめました。
厚塗りでモールド(ディテール)が埋まってしまった
- 原因:一度に多量の塗料を吹きつけたことによる塗膜の過剰な厚み。
サーフェイサーは薄く何度かに分けて重ね塗りするのが基本です。軽く吹き付ける「捨て吹き」を1回行い、乾燥を挟みながら少しずつ重ねることで、繊細なモールドを残したまま下地処理ができます。
ムラができた/表面がザラついた
- 原因:缶内の塗料が十分に攪拌されていない、あるいは吹き付ける距離や角度が不安定。
スプレー缶は使用前にしっかりと1〜2分振り、塗料とガスをよく混ぜましょう。吹きつけ時はパーツから約20cmの距離を保ち、一定の速度で水平に動かすのがコツです。風が強い場所や湿度の高い日は作業を避けると、より安定した仕上がりになります。
塗料がはじかれる(弾いて定着しない)
- 原因:脱脂不足や油分の残留により、塗膜が弾かれてしまう。
サーフェイサー前の洗浄・脱脂は必須です。中性洗剤や無水エタノールを使用し、表面の皮脂や埃をしっかり除去しておきましょう。
サーフェイサー後のチェックポイント
サーフェイサー塗布後は、乾燥を十分に待ってから下記の点を確認しましょう。
- 小さなキズやヒケ(沈み)が残っていないか
- パテ処理や合わせ目消しが完全に仕上がっているか
- 表面にザラつきやムラがないか
問題があれば、やすりがけで再調整し、再度サーフェイサーを塗布すれば修正可能です。仕上がりの精度を高めるには、この「チェック&修正」の工程が非常に重要です。
サーフェイサーは単なる下地塗料ではなく、完成度を左右する大切なプロセスです。丁寧な施工を心がけることで、その後の塗装がグッと映えるようになります。
よくある質問(Q&A)
- サーフェイサーは必ず使わなければいけませんか?
- 必須ではありませんが、完成度を高めたい場合は強く推奨されます。
特に塗装仕上げを前提とする場合、サーフェイサーを省くと下地の凹凸やキズが目立ちやすくなり、塗料の密着性や発色にも影響を与えます。仕上がりにこだわるなら、下地処理として取り入れるべき工程です。 - 筆塗りでサーフェイサーを使うことは可能ですか?
- 可能ですが、あまり推奨されません。
筆塗りだとどうしても塗膜にムラが出やすく、均一な仕上がりが難しくなります。やむを得ない場合を除き、スプレーまたはエアブラシでの塗布が理想的です。 - サーフェイサーの匂いが気になります。どう対策すればよいですか?
- 必ず換気を行い、防毒マスクや塗装ブースを併用しましょう。
ラッカー系サーフェイサーは揮発性が高く、刺激臭が強いため、室内で使用する際は換気設備の整った環境が不可欠です。匂いが気になる方には、水性サーフェイサーや無臭タイプの製品も選択肢として有効です。 - 100円ショップのプライマー(プラサフ)は使えますか?
- 簡単な用途であれば使用可能ですが、精度を求める模型製作には不向きです。
100均の製品は手軽さが魅力ですが、粒子の粗さや密着性、仕上がりの均一性などにバラつきがあることも。精密な表現を求める場合や大切な作品には、模型用として開発された専用サーフェイサーの使用をおすすめします。
必要性・使い方・代替品に関する疑問は多いですが、基本を押さえておけばサーフェイサーは心強い味方になります。
まとめ:サーフェイサーは塗装クオリティを引き上げる“ひと手間”
サーフェイサーは、ただの下地処理ではありません。
小さなキズの可視化や塗料の密着向上、発色の安定化など、完成度を左右する重要な役割を担っています。
初心者の方はまず、スプレータイプのグレーサフから試してみるのがおすすめ。
慣れてきたら色や種類を変えて、自分のスタイルに合ったサーフェイサー選びを楽しんでください。
この“ひと手間”を惜しまないことで、あなたの作品はさらに魅力的に仕上がるはずです。
ぜひ、次の制作からサーフェイサーを取り入れてみてくださいね!