
- 塗装ってやらなきゃダメなの?
- 難しそうで自分には無理かも…
そんなふうに感じている方、安心してください。実は塗装って、思っているほどハードルは高くないんです。
もちろん、素組み(無塗装)でも十分楽しめます。でも、ちょっと色を加えるだけで、グッと完成度がアップするのもまた事実。自分好みの色に変えたり、金属感や質感を表現したり…塗装には「模型をもっと楽しくする力」が詰まっています。
この記事では、塗装を始める前に知っておきたい基本的な知識をまとめました。塗装の役割から、塗装の種類、そしてその方法まで。「やってみたいけど、何から手をつければいいの?」という初心者さんにもわかりやすく紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
塗装前に知っておきたい基本知識
模型制作における「塗装」は、単なる色付けにとどまらず、作品全体の完成度を大きく左右する重要な工程です。ここでは、塗装の基本的な役割と、その効果について理解を深めておきましょう。
塗装の主な役割とは?
塗装には大きく分けて、次の3つの目的があります。
色替え(オリジナルカラー化)
成型色のままでも十分に楽しめますが、自分好みの配色に塗り替えることで、世界に一つだけのオリジナルカラーに仕上げることが可能です。
たとえば、ガンダムを黒ベースのダークカラーにして重厚感を演出したり、戦闘機を架空の部隊仕様にカスタムしたりと、自由な発想で表現の幅を広げられます。
質感の向上
塗装によって、質感の印象を大きく変えることもできます。
たとえば、金属的な光沢を放つ「メタリック塗装」や、落ち着いた雰囲気を演出する「つや消し(マット)仕上げ」などを使い分けることで、視覚的にも触感的にもリアルな質感を再現できます。
リアリティの追求
スケールモデル(戦車・飛行機・艦船など)では、実在の機体や車両の雰囲気にどれだけ近づけるかが重要なテーマになります。迷彩塗装やウェザリング(汚し表現)といった技法を組み合わせることで、単なるプラスチックの模型が「本物らしく」生まれ変わります。
塗装の種類
模型の塗装には、目的や仕上げのレベルに応じていくつかの方法があります。ここでは、代表的な3つの塗装スタイルについて、それぞれの特徴や難易度をわかりやすく解説します。
成型色のまま(無塗装)
プラモデルは、あらかじめ色分けされた成型色で構成されているものが多く、塗装をせずともある程度の完成度を楽しめるように設計されています。この「無塗装仕上げ」は、塗装道具がなくてもすぐに組み立てを楽しめるため、まさに初心者に最適なアプローチです。
ただし、色味の自由度は低く、どうしても「プラスチック感」が残る点は否めません。よりリアルな質感や自分好みのカラーリングを目指す場合は、次のステップへ進むのがよいでしょう。
部分塗装
無塗装では物足りないけれど、いきなり全塗装はハードルが高い——そんな方におすすめなのが「部分塗装」です。たとえば、モールド(彫刻部分)にスミ入れを施したり、顔や武器といった目立つ部分のみを筆で塗り分けたりする方法です。
部分塗装は比較的手軽で、必要な道具も最小限で済みます。それでいて作品全体の印象をグッと引き締める効果があるため、初心者が塗装に挑戦する第一歩として非常に有効です。
全塗装
全塗装とは、すべてのパーツに自分の手で色を塗っていく、本格的な塗装スタイルです。使用する塗料や道具の選定、下地処理、乾燥時間の管理など、作業工程は増えますが、その分仕上がりの完成度は格段に高くなります。
特に、自分だけのオリジナルカラーを追求したい方や、成型色では表現しきれないリアルな質感を再現したい方にはおすすめです。初めは一部のパーツだけを塗って練習し、徐々にフル塗装へステップアップしていくのも良いでしょう。
塗装方法の種類
プラモデルの塗装にはいくつかの方法があり、それぞれ仕上がりの精度や作業の難易度で必要な道具が異なります。ここでは、代表的な3つの塗装方法について、その特徴や使いどころをわかりやすく解説します。
筆塗り(ブラシペインティング)
筆塗りは、最も手軽に始められる塗装方法です。
ため、初めて塗装に挑戦する方にも向いています。特に、スミ入れやアクセントカラーの塗り分けといった“部分塗装”との相性が良く、塗装範囲が限られている場合には非常に有効です。使用する筆の種類や塗料の希釈具合、重ね塗りの回数によって仕上がりに差が出るため、上達にはある程度の練習が必要ですが、小回りがきくため細かい作業には最適です。
スプレー塗装(缶スプレー)
スプレー塗装は、エアゾール式の塗料缶を使って広範囲を一気に塗装する方法です。
ため、パーツ全体を一気に仕上げたいときに重宝します。ただし、スプレーは勢いが強く、狙いどおりに塗料が乗らないこともあるため、吹き付ける距離や角度、環境(換気や気温)に注意が必要です。また、塗装時は屋外か、しっかりとした換気設備のある場所で作業することが望ましいでしょう。
エアブラシ塗装
エアブラシは、コンプレッサーと専用のハンドピースを使って塗料を霧状に噴射する、最も精密で本格的な塗装手法です。塗装の濃度や吹き付け量を細かくコントロールできるため、グラデーションやシャドウといった繊細な表現も可能です。
その分、設備の導入にはある程度のコストがかかり、取り扱いにも慣れが必要ですが、完成度を重視したい方や本格的に模型塗装を楽しみたい方には非常におすすめの手法です。塗装ブースやエアブラシ用クリーナーといった周辺機材の準備も忘れずに行いましょう。
塗装に必要な道具と塗料の選び方
プラモデルの塗装を始めるにあたっては、塗料だけでなく、作業をスムーズかつ安全に進めるための道具をしっかりと揃えることが重要です。ここでは、初心者がまず準備すべき基本的な道具と、それぞれの役割について解説します。
塗料(アクリル系/エナメル系/ラッカー系)
使用する塗料の種類によって、発色や乾燥時間、におい、取り扱いの難易度が異なります。アクリル系は扱いやすく、初心者にも人気。エナメル系は筆塗りに適し、ラッカー系は発色が良く乾燥も早いため、エアブラシ塗装に好まれます。用途や技法に合わせて選びましょう。
筆(平筆/面相筆)
部分塗装や細部の塗り分けには筆が欠かせません。広い面には「平筆」、細かい部分や線を引くときには「面相筆(めんそうふで)」が適しています。毛質や形状にも種類があるため、用途に応じて数種類を使い分けると仕上がりが向上します。
持ち手(クリップ付き竹串など)
小さなパーツを固定して塗装するための「持ち手」は、手を汚さずに塗れるだけでなく、乾燥中の管理にも便利です。市販の塗装用持ち手のほか、自作する場合は竹串にワニ口クリップを取り付けたものが手軽でおすすめです。
マスク・ゴーグル・換気設備
塗料の種類によっては刺激臭が強かったり、有害な揮発成分を含んでいる場合があります。特にラッカー系やエアブラシ使用時には、防塵マスクや保護ゴーグルを装着し、換気の良い環境で作業することが必須です。安全対策をおろそかにしないようにしましょう。
洗浄用の溶剤・パレット・耐水ペーパーなど
筆やエアブラシを洗浄するためには、塗料に合った専用の溶剤(うすめ液)が必要です。筆塗りの場合は、塗料を混色したり希釈したりする「パレット」もあると便利です。また、塗装前の表面処理や失敗時の修正に使える耐水ペーパーも用意しておきましょう。
塗料の種類とそれぞれの特徴
プラモデルの塗装に使用される塗料は、大きく分けて「アクリル系」「エナメル系」「ラッカー系」の3種類があります。それぞれ性質や使用感に特徴があり、目的や技法に応じて使い分けることで、より美しい仕上がりが得られます。ここでは各塗料の特徴を詳しく解説します。
アクリル系塗料
- 初心者に優しく、取り扱いやすい水性塗料
アクリル系は水性タイプの塗料が多く、
して使用できます。水や専用うすめ液で希釈や筆洗いができるため、手軽に扱えるのが魅力です。乾燥後は耐水性となり、しっかりと表面に定着します。ただし、筆ムラが出やすい傾向があるため、塗り方には多少の慣れが必要です。エアブラシ塗装にも対応可能で、環境や安全性を重視する方に特におすすめです。
エナメル系塗料
- 発色が良く、筆塗りに適した塗料
エナメル系は隠ぺい力(下地を覆い隠す力)が高く、発色も非常に良好な塗料です。乾燥にやや時間がかかりますが、その分、
ため、筆塗りに適しています。特にスミ入れや細部の塗り分け、ウェザリング(汚し塗装)に向いており、多くのモデラーが部分塗装に使用しています。溶剤成分は比較的穏やかですが、プラ素材を侵しやすいため、塗る場所や下地処理には注意が必要です。また、アクリルやラッカー塗装の上に重ねることが可能で、リタッチや修正にも向いています。
ラッカー系塗料
- プロ仕上げに欠かせない高発色・速乾タイプ
ラッカー系は発色が非常に鮮やかで、乾燥が早く、塗膜の強度も高いため、最終仕上げ用の塗装によく使用されます。エアブラシでの使用に適しており、広い面をムラなく均一に仕上げることが可能です。
ただし、溶剤成分が強く、刺激臭もあるため、作業には換気設備や防毒マスクなどの安全対策が欠かせません。筆塗りでも使用できますが、乾燥が早いため塗りムラが出やすく、初心者にはやや扱いづらい面もあります。
用途に応じた使い分けを
塗料の種類 | 特徴 | 主な用途 |
---|---|---|
アクリル系 | においが少なく安全性が高い。 扱いやすい。 | 全体・部分塗装、初心者向け |
エナメル系 | 筆塗り向きで発色が良い。 乾燥が遅め。 | スミ入れ・細部塗装・ウェザリング |
ラッカー系 | 発色・耐久性が高く速乾。 やや上級者向け。 | 全体塗装、エアブラシ使用時 |
それぞれの塗料には長所と短所があります。
塗装の目的や自分の技術レベル、作業環境に合わせて最適な塗料を選びましょう。初心者のうちは、まずアクリル系やエナメル系から始めて、徐々にラッカー系にもチャレンジしていくのがおすすめです。
初心者におすすめの塗料と筆・スプレーの選び方ガイド
塗装を始めるにあたって、道具選びは非常に重要です。とくに初心者の方にとっては、「どの塗料を選べばよいか」「筆やスプレーは何を使えばいいか」で悩むことも多いでしょう。ここでは、初めて塗装に挑戦する方が安心して選べるおすすめの塗料や筆、スプレー製品をご紹介します。
初心者に扱いやすい水性塗料
初めて塗装に挑戦する方には、「水性アクリル塗料」がおすすめです。においが少なく、筆や道具を水や専用うすめ液で簡単に洗浄できるため、自宅の室内でも取り扱いやすいのが特徴です。
特に評価が高い製品は以下のとおりです:
タミヤ アクリル塗料(X・XFシリーズ)
模型専用として定番の水性アクリル塗料。筆塗り・エアブラシの両方に対応し、色数も豊富です。
水性ホビーカラー(GSIクレオス)
安全性が高く、塗膜の強度も改良されており、初心者から上級者まで幅広く支持されています。最近では「水性ホビーカラー・リニューアル版」も登場し、より使いやすくなっています。
筆の選び方:専用筆で仕上がりが変わる
筆塗りに挑戦する場合は、100円ショップなどの一般的な筆ではなく、模型専用の筆を使うことを強くおすすめします。毛の質やコシ、塗料の含み具合などが全く異なり、仕上がりに大きく差が出ます。
おすすめの筆
- 面相筆(細筆):細かな塗り分けやスミ入れに便利
- 平筆:広い面やベタ塗りに適した筆
また、初心者向けの筆セット(各種サイズ入り)も市販されており、最初の1本として選ぶには最適です。タミヤ、ウェーブ、GSIクレオスなどの模型メーカーが出している製品は品質も安定しています。
スプレー塗装:手軽に広範囲をキレイに塗れる
筆塗りでは難しい「広い面積の均一な塗装」には、スプレー塗装が効果的です。初心者でも扱いやすい以下の製品がおすすめです。
ガンダムマーカーエアブラシシステム(GSIクレオス)
市販の「ガンダムマーカー」を専用エアブラシにセットして使う簡易スプレーシステム。缶タイプのエア缶で手軽に使え、導入コストが低いのが魅力です。初心者でもムラになりにくく、部分塗装にも便利です。
Mr.カラースプレー(GSIクレオス)
本格的な仕上がりが得られるラッカー系スプレー塗料。乾燥が早く、発色も鮮やかです。使用時には換気や防毒マスクが必要ですが、缶スプレーなのでエアブラシ設備がなくても十分に美しい塗装が可能です。
アイテム | 初心者におすすめの製品 | 特徴 |
---|---|---|
水性塗料 | タミヤアクリル、水性ホビーカラー | においが少なく、安全に扱える |
筆 | 模型専用の平筆・面相筆、筆セット | 毛質が良く、塗りやすい |
スプレー | ガンダムマーカーエアブラシ、Mr.カラースプレー | 広範囲をムラなく塗装できる |
道具選びを間違えなければ、塗装の難易度はぐっと下がります。まずは「安全で扱いやすい塗料」と「信頼できる基本ツール」からそろえて、少しずつ塗装に慣れていきましょう。完成後の達成感はひとしおです。
塗装の手順と準備の流れ:美しい仕上がりのための下ごしらえ
塗装の出来栄えを左右するのは、実は「塗る前の準備」です。下処理を丁寧に行うことで、発色や塗膜の定着性が格段に向上し、完成後の仕上がりに大きな差が出ます。ここでは、初心者の方でも迷わず実践できる基本的な塗装準備の流れを4ステップで解説します。
表面処理:ゲート跡・パーティングラインの処理
パーツをランナーから切り離した後には、ゲート跡やパーティングライン(型の合わせ目)が残ります。これらを丁寧に処理しておくことで、塗装後に「アラ」が目立たなくなり、完成度が大きく向上します。
必要な道具
- デザインナイフ、ヤスリ(スポンジやスティックタイプ)、耐水ペーパーなど
ポイント
- 番手(粗さ)は240〜400→600〜800と、徐々に細かく変えて仕上げると滑らかな表面になります。
特に塗装面となる部分は、ヤスリ傷が残らないよう丁寧に仕上げることが重要です。
洗浄:表面の油分やホコリを除去する
表面処理のあとは、パーツの洗浄を行います。成型時の離型剤や手の皮脂、ヤスリの粉などがパーツに付着していると、塗料が弾かれたりムラになったりする原因になります。
油分やホコリを除去する方法
- 中性洗剤を薄めたぬるま湯にパーツを入れ、柔らかいブラシ(歯ブラシなど)でやさしく洗う
注意点:洗浄後はしっかり乾燥させてから次の工程へ進みましょう。自然乾燥がおすすめですが、時短する場合はドライヤーの冷風を活用してもOKです。
サーフェイサー:下地処理と傷の確認
サーフェイサーは、塗装の前に吹き付ける「下地塗料」です。下地色を整え、微細なキズや段差を視認しやすくしてくれるため、より高い完成度を目指す場合には欠かせない工程です。
主な効果
- 表面の色ムラをなくし、塗料の発色を安定させる
- 微細なキズを埋める
- パーティングラインや接着跡などの見落としチェックに役立つ
使用方法
- 缶タイプまたはエアブラシ用サーフェイサーをパーツ全体に薄く吹き付ける。厚塗りは禁物です。
サーフェイサーにはライトグレー、ホワイト、ブラックなどのカラーがありますが、上塗りする塗料の明るさに応じて使い分けましょう。
持ち手の活用と乾燥スペースの確保
塗装作業では、持ち手(クリップ付き棒や竹串など)を使ってパーツを固定すると、手が汚れず作業効率が格段に向上します。
持ち手の例
- ワニ口クリップ+竹串、塗装用持ち手棒など
挟み方のコツ
- パーツの目立たない部分を挟む、または接続穴に差し込むようにして固定する
また、塗装後の乾燥スペースも重要です。乾燥中にホコリが付着しないよう、ダンボール製の乾燥ブースやネット付きのラックなどを用意しておくと安心です。
準備8割、塗装2割
塗装は「事前準備をどれだけ丁寧に行えるか」で仕上がりが大きく変わります。
工程 | 内容 | ポイント |
---|---|---|
表面処理 | ゲート跡やキズを除去 | 丁寧なヤスリがけで見た目が格段に向上 |
洗浄 | 油分・汚れを除去 | 中性洗剤+乾燥をしっかり |
サーフェイサー | 下地の整え・傷の確認 | 発色アップと仕上がり精度向上に効果的 |
持ち手・乾燥 | 作業効率と仕上がりを両立 | 安定した固定とホコリ対策がカギ |
この基本ステップを踏むことで、塗装初心者でも格段にクオリティの高い仕上がりが実現できます。焦らず、一つひとつの工程を丁寧にこなしていきましょう。
実践編:基本塗装3種のテクニック解説
プラモデルの塗装方法にはいくつかの選択肢があり、それぞれに特長と適した使い方があります。ここでは、代表的な3つの塗装技法「筆塗り」「スプレー塗装(缶スプレー)」「エアブラシ塗装」について、初心者にも実践しやすいように手順とコツを詳しく解説します。
筆塗り:コストを抑えて手軽に楽しめる基本技法
筆塗りは、最も手軽に始められる塗装方法で、道具も少なくコストパフォーマンスに優れています。主に部分塗装や小パーツの塗り分けに適しており、細かな作業にも柔軟に対応できます。
仕上がりを美しくするコツ
一度に厚塗りせず、薄く均一に塗り重ねるのが基本。最低でも2~3回に分けて塗ると、ムラを抑えやすくなります。
筆運びは一定方向に揃え、塗料が乾く前に何度も触らないように注意しましょう。
希釈も重要な要素。アクリル系やエナメル系塗料は、専用の溶剤で適度に薄めて使うと塗りムラが少なくなります。
注意点
- 筆の毛先が割れていたり、塗料が乾き始めた状態で無理に塗ると、筆跡やダマが目立ちやすくなります。
スミ入れは筆塗りとは異なる技法で、パネルラインを強調するために行う工程です。混同しないようにしましょう。
スプレー塗装(缶スプレー):広範囲を手早く美しく
スプレー塗装は、缶に入った塗料をそのまま吹き付ける方式で、大きな面積や全体塗装に向いています。均一な塗膜が得やすく、筆ムラの心配もないため、初心者にも扱いやすいのが特長です。
正しいスプレー距離と吹き方
パーツから20〜30cmの距離を保ち、一定のスピードで「スーッ」と水平に吹き付けるように意識しましょう。
一気に塗ろうとせず、数回に分けて薄く重ね塗りするのが鉄則です。1回目は下地が透ける程度でOKです。
作業時のポイント
- 屋外または換気の良い場所で行い、周囲への塗料の飛散にも注意してください。
- 気温が低すぎたり湿度が高い日は、乾燥不良や塗膜の白化(かぶり)が起きやすくなります。塗装には適度な室温(20〜25℃前後)と湿度(50%以下)が理想です。
エアブラシ塗装:精密で自由度の高い上級技法
エアブラシは、コンプレッサーからの圧縮空気を使って塗料を霧状に吹き付ける塗装機器です。グラデーション塗装やシャドウ表現など、繊細な塗り分けが可能で、ハイレベルな仕上がりを追求したい方におすすめの技法です。
必要な設備
- エアブラシ本体
- コンプレッサー
- 塗装ブース(排気装置付き推奨)
- 専用の希釈剤(ラッカー・アクリル塗料それぞれに適したもの)
エアブラシの基本操作
噴きつけ距離は約10〜15cmが目安。ハンドピースの動きを止めずに滑らかに動かしながら吹きます。
吹き出し量とエア圧の調整に慣れると、濃淡のある塗装(グラデーションやプリシェーディング)も自在にこなせるようになります。
留意点
- セッティングや清掃など手間はかかりますが、塗膜の薄さ・発色の美しさ・塗装自由度の面では群を抜いています。
- 初期投資はやや高めですが、本格的な模型塗装を長く続けたい方にとっては有力な選択肢です。
目的と環境に応じた塗装法を選ぼう
塗装方法 | 特長 | 向いている用途 | 初心者へのおすすめ度 |
---|---|---|---|
筆塗り | 安価・手軽 | 部分塗装、細部仕上げ | ★★★★☆ |
スプレー塗装 | 均一で簡単 | 全体塗装・大面積 | ★★★★☆ |
エアブラシ塗装 | 高精度・高自由度 | 本格的な塗装全般 | ★★★☆☆ (準備が必要) |
どの塗装方法も、正しい知識と少しの練習で確実に上達します。まずは自分の環境や目的に合った方法からスタートし、楽しみながら塗装スキルを磨いていきましょう。
塗装でありがちな失敗とその対処法
プラモデル塗装は、ちょっとした環境の変化や塗り方の違いで仕上がりが大きく変わってしまいます。初心者の方にとっては、「なんでこうなったの?」と戸惑うことも多いかもしれません。
ここでは、塗装でよく起こりがちなトラブルと、その原因・対処法・予防策について、詳しく解説します。
ムラになる
塗料が均一に乗らず、まだらになってしまう現象です。特に筆塗りや缶スプレーの初回使用時に多く見られます。
主な原因
- 塗料の濃度が適切でない(濃すぎる/薄すぎる)
- 一度に塗りすぎてしまう
- 筆やスプレーの動かし方にムラがある
予防法・対処法
- 塗料は適切に希釈し、薄く何回かに分けて重ね塗りすることが基本
- スプレーや筆は常に一定のスピードで動かす
- 乾燥を待たずに何度も触らない
垂れ・液だまり
塗料が流れて溜まってしまう状態。光沢塗料やスプレー塗装でありがちです。
主な原因
- 一度に厚く塗りすぎた
- 噴射距離が近すぎた(缶スプレー/エアブラシ)
予防法・対処法
- 一気に塗らず、薄く数回に分ける
- 垂れてしまった箇所は、完全に乾燥後にヤスリやスポンジヤスリで削って平滑にし、再塗装
ザラつき(粉吹き、かぶり)
表面がザラザラとした質感になってしまう状態。缶スプレーやエアブラシ使用時に多く見られます。
主な原因
- 噴射距離が遠すぎる
- 湿度が高すぎる(塗料が空中で乾燥してしまう)
予防法・対処法
- 適正な距離(缶スプレーなら20〜30cm)を保つ
- 湿度50%以下、室温20〜25℃程度の安定した環境で塗装する
- ザラついた面は、耐水ペーパーで表面を整えてから再塗装
色が乗らない/下地が透ける
塗ったはずなのに色が薄く、下地が透けて見えてしまう状態です。
主な原因
- 塗料が薄すぎる
- サーフェイサー未使用 or 下地が暗色すぎる
予防法・対処法
- 塗料は薄くても回数を重ねることで発色を良くする
- 明るい色を塗る場合は、グレーや白系のサーフェイサーで下地を明るく整えておく
ホコリ・ゴミの混入
塗装面に細かいホコリや異物が付着してしまうと、美しい仕上がりが台無しになります。
主な原因
- 塗装環境の清掃不足
- 静電気でホコリを引き寄せた
予防法・対処法
- 塗装前に静電気防止ブラシやエアダスターでパーツを清掃
- 作業机・部屋もあらかじめ掃除し、風の流れをコントロール
- ゴミがついた場合は、乾燥後にヤスリで削って再塗装
指紋がつく
塗料が乾く前に触ってしまうと、指紋が残ってしまいます。
主な原因
- 乾燥時間が不十分
- 手袋未着用での作業
予防法・対処法
- 塗装後はしっかり乾燥時間を確保(最低でも数時間、理想は1日以上)
- 作業時はニトリル手袋や綿手袋を着用して、指紋の付着を防止
失敗は「経験値」、次に活かせる財産
塗装の失敗は、誰にでもある通過点です。むしろ「なぜそうなったか」を考えて改善することで、確実に塗装スキルは向上します。
「うまくいかなかったな…」というときこそ、チャンス。原因を突き止め、対処法を知っておけば、次はもっと美しい仕上がりが目指せるはずです。焦らず一つずつ経験を積みながら、自分なりのベストな塗装環境を整えていきましょう。
塗装後の仕上げと保護 ― トップコートの基本と活用法
塗装が完了した後の「仕上げ」こそ、作品の完成度を大きく左右する重要な工程です。色味の統一感を整えたり、塗装面やデカールを保護したりと、見た目と耐久性の両方を高めてくれるのが“トップコート”と呼ばれるクリア塗装です。
ここでは、クリアコートの種類や使いどころ、仕上げのタイミングなどについて、丁寧に解説します。
クリアコートの種類と仕上がりの違い
トップコートには主に「光沢」「半光沢」「つや消し」の3種類があり、それぞれ質感や適した用途が異なります。
光沢(グロス)
塗装面がツヤツヤと光を反射し、鏡面のような仕上がりに。メタリックカラーの美しさを際立たせたいときや、カーモデル・ロボット系に使われることが多いです。
特徴
- 発色が鮮やかに見える
- デカールの段差をなめらかにできる
- ホコリが付きやすいため、塗装環境の清潔さが重要
半光沢(セミグロス)
光沢とつや消しの中間にあたる、やや控えめなツヤ感。自然で落ち着いた仕上がりが得られるため、キャラクターモデル全般に幅広く使える万能タイプです。
特徴
- 落ち着いた質感と発色のバランスが良い
- スケールモデルやロボット系に適応性が高い
つや消し(フラット/マット)
表面が光をほとんど反射せず、マットな質感になります。リアルな質感を求められるミリタリーモデルや、重厚感を演出したい場合におすすめです。
特徴
- 表面の細部が強調され、シャープな印象に
- ウェザリング(汚し)塗装とも相性が良い
- スプレーのかけすぎに注意(白化現象の原因に)
トップコートの役割と最適なタイミング
トップコートは、見た目の調整だけでなく、実用的な効果も兼ね備えています。
トップコートの主な効果
- 塗装面の保護:擦れや指紋から塗膜を守る
- デカールの定着:乾燥後の剥がれや浮き防止に有効
- 質感の調整:ツヤ感を統一し、作品に一体感を出す
トップコートは、塗装・デカール貼りがすべて完了した後の最終工程として行うのが基本です。
特にデカールは非常にデリケートなので、定着を良くする意味でも、貼付後に軽くクリアを吹いて保護するのがおすすめです。
デカール保護とウェザリング準備としてのクリア塗装
デカール貼付後にそのままウェザリングをすると、ふやけたり剥がれたりするリスクがあります。これを防ぐため、「中間クリアコート」を行い、段差をならすとともにデカールをしっかり固定しましょう。
また、ウォッシングやドライブラシなどのウェザリング工程を加える場合は、その前に光沢または半光沢クリアで表面をコートしておくと、塗料の流れやすさが向上し、作業が安定します。
そして、仕上げとして最終的につや消しトップコートでトーンを落とすことで、よりリアルな質感を演出できます。
トップコートで作品の完成度を高めよう
トップコートは単なる“お化粧”ではなく、塗装面の保護、質感調整、工程間のつなぎと、あらゆる面で作品の完成度を引き上げてくれる重要なステップです。
クリアの種類や使うタイミングをきちんと理解すれば、塗装の美しさが長持ちし、作品全体の印象もグッと引き締まります。少し手間はかかりますが、そのひと手間が“仕上がりの差”としてしっかり現れてくれるはずです。
あなたの模型作品に、ぜひ適切なトップコートを取り入れてみてください。
初心者におすすめの塗装ステップ ― 無理なく始める塗装の第一歩
模型塗装に初めて挑戦する際は、「どこから始めればいいの?」「全部塗らないとダメ?」と戸惑うことも多いかもしれません。ですが、最初から完璧を目指す必要はありません。大切なのは、気軽に“楽しみながらステップアップしていく”ことです。
ここでは、初心者の方でも無理なく取り組める塗装の進め方を、段階的にご紹介します。
まずは「部分塗装+トップコート」から始めよう
模型全体を一から塗装するのは、手間も時間もかかるため、最初はハードルが高く感じてしまうかもしれません。そこでおすすめなのが、「部分塗装」と「トップコート」の組み合わせです。
たとえば、武器やカメラアイ、バーニアなど、目立つパーツだけを塗装してみましょう。細かい部分を少しだけ色付けするだけでも、完成後の印象がぐっと引き締まります。
そのうえで、仕上げにトップコート(クリアスプレー)を吹きかければ、質感が整い、未塗装部分との違和感も軽減されます。これだけでも十分に「塗装した満足感」が得られるはずです。
1キットを使って段階的に練習してみよう
慣れないうちは、「1体のキットの中で、パーツごとに異なる塗装方法を試す」のもよい練習になります。たとえば、腕だけ筆塗り、バックパックはスプレー塗装、他のパーツはそのまま、という具合に段階的に試してみるのです。
これにより、各塗装法の特徴やコツを実際に体験しながら学べますし、どの方法が自分に合っているかも分かってきます。
ステップアップの例:段階的に挑戦していこう
- 1体目は「筆塗り+つや消しトップコート」
- 2体目では「缶スプレー塗装+デカール貼り」
- 3体目で「エアブラシ+ウェザリング」に挑戦
このように、1体ずつ段階を踏んで技法を増やしていけば、自然と塗装の幅も広がっていきます。
「失敗しても大丈夫」 ― 上達のカギはチャレンジ精神
塗装において最も大切なのは、「失敗を恐れずに手を動かしてみること」です。
ムラになったり、垂れてしまったりしても大丈夫。失敗から学べることこそが、何よりの経験値になりますし、塗装のリカバリーもまたスキルの一部です。
塗り直したり、ヤスリで整えたり、もう一度吹き重ねたり――そうした試行錯誤の積み重ねが、確実に上達へとつながります。
小さな一歩から、塗装の楽しさを広げよう
塗装は、奥深い世界でありながら、初めての一歩は意外と気軽に踏み出せます。まずは部分塗装とトップコートから。慣れてきたら一つずつステップアップしていきましょう。
「ちょっとだけ色を塗る」その挑戦が、あなたの模型ライフをより豊かにしてくれるはずです。失敗を恐れず、楽しみながら塗装に取り組んでみてください。
まとめ
- 塗装は「難しそう」から「楽しい」に変わる
最初はハードルが高く感じても、1回やってみると世界が広がります。色を塗ることで「作った」から「仕上げた」へ。達成感がグッと高まります。
最初の一歩を踏み出そう!
まずは筆塗りやスプレーで、気軽に塗装を始めてみてください。