ABS素材に塗装できる?割れを防ぐコツとおすすめ塗料を徹底解説!

ABS素材に塗装できる?割れを防ぐコツとおすすめ塗料を徹底解説!

プラモデルの関節パーツや内部フレームによく使われている「ABS樹脂」。

  • 塗装したら割れた…
  • そもそも塗料は何を使えばいいの?

といった声も多く、扱いに悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、ABS素材の特徴や塗装時の注意点、おすすめの塗料や対処法まで、わかりやすく解説します。 これからABSパーツを塗装しようとしている方はもちろん、過去に失敗した経験がある方もぜひ参考にしてください!

ABS素材の塗装に!Mr.プライマーサーフェイサー

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ABSってどんな素材?

ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)は、プラモデルやフィギュアなどに広く使われているプラスチック素材です。最大の特徴は、耐衝撃性に優れ、硬くて頑丈であること

そのため、関節や可動部といった力のかかる部分に使われやすい一方、塗装時には注意が必要です。

PSとの違い(強度、柔軟性、塗料の食いつき)

ABSはPS(ポリスチレン)に比べて強度と柔軟性に優れていますが、塗料の食いつきがやや劣る傾向があります。

PSは塗料が馴染みやすく割れにくいのに対し、ABSは溶剤を吸いやすいため、塗装によるクラックや破損が起こりやすい点が難点です。

ABS塗装で起きる「割れ」の原因とは?

ABSに塗装した際にパーツが割れてしまうトラブルは少なくありません。以下が主な原因です。

溶剤が染み込みやすい構造

ABSは内部に微細な空隙があり、塗料の溶剤が染み込みやすい素材です。
そのため、強溶剤を厚く塗布すると内部から破損が進んで割れやすくなってしまいます。

硬質ゆえに応力が逃げにくい

ABSは硬いため、外力が加わった際に応力が集中しやすく、ヒビや割れが発生しやすい素材です。
特に関節部や取り付け部の塗装は要注意です。

乾燥時の収縮でヒビ割れが起こるケースも

塗料が乾燥する際に生じる収縮応力が、ABSパーツの応力とぶつかり、クラックの原因になることもあります。

ABSに使える塗料・使えない塗料

ラッカー系は要注意!

ラッカー塗料は非常に強い溶剤成分を含んでいるため、ABSに使用するとクラックや破損を引き起こすリスクがあります。

どうしても使う場合の注意点

  • 希釈して薄めに使用する
  • 一度に厚塗りせず、薄く何度も重ねる
  • パーツを乾燥させる時間を十分取る
  • おすすめはアクリル系・エナメル系

水性アクリルのメリット

水性アクリルは溶剤が穏やかで、ABSへの影響が少なく安全に使えます。
また、初心者にも扱いやすく、筆塗り・エアブラシの両方で対応できます。

エナメル系は割れにくいが弱点も

エナメル系塗料はABSを侵しにくく、細部塗装に適しています。
ただし、乾燥に時間がかかり、広い面積への塗装には向きません。

塗料よりも重要な「プライマー選び」

プラ素材対応プライマーの選び方

ABS対応と明記されたプライマーを使用すれば、塗料の密着性が高まり、塗膜の剥がれも防げます
タミヤのナイロン・PP用プライマーがおすすめです。

サーフェイサーの使用はOK?

弱溶剤系のサーフェイサーであれば、使用可能です。
強溶剤タイプは、ABSを侵す恐れがあるので避けましょう。

ABSを割らずに塗装するためのコツ

ちょっとしたコツを押さえることで、パーツの割れやヒビ割れを防ぎつつ、きれいに仕上げることができます。以下のポイントを守って、安全に塗装しましょう。

パーツの分解・接着前に塗装を済ませる

ABSは強度が高い反面、塗装後に力が加わると割れやすい特性があります。
そのため、パーツを組み立てる前(特に接着や可動部のはめ込み前)に塗装を済ませておくのが鉄則です。

塗膜の内側に溶剤が閉じ込められるのを防ぎ、応力がかかるタイミングも避けられます。

塗料は「薄め」で、重ね塗りが基本

ABSに厚塗りすると、塗料に含まれる溶剤が内部に浸透しやすくなり、時間が経ってから割れる(クラック)原因になります。
塗料は必ず薄めに調整し、一度に塗ろうとせず、何度かに分けて重ね塗りするのが安全です。

焦らず、乾燥を挟みながら少しずつ色を重ねましょう。

筆塗りよりエアブラシの方が安全

筆塗りでも塗装は可能ですが、どうしても塗料の厚みやムラが出やすく、溶剤の影響が大きくなりがちです。

その点、エアブラシは広範囲に薄く均一に吹きつけられるため、ABS塗装に向いています。

特にラッカー系塗料を使う場合は、エアブラシでの「薄吹き」が破損防止に有効です。

ドライヤーや温風による強制乾燥はNG

塗装後にドライヤーで乾燥を早めたくなることもありますが、ABSは熱に弱く、変形や内部に応力が発生するリスクがあります。
強制的に熱を加えると、表面は乾いても内側に残った溶剤が膨張し、結果的に割れることも。

塗装後は風通しの良い場所で自然乾燥を心がけましょう。

ABS塗装でよくある失敗とその対処法

ABS塗装でありがちなトラブルとその解決策について解説します。
トラブルの原因を理解して、きれいな仕上がりを目指しましょう。

割れてしまった時のリカバリー方法

パーツが割れてしまった場合は、以下のような方法で修復できます。

  • 瞬間接着剤+補強材(プラ板や金属線など)で接着・補強
  • プラリペアなどのプラスチック補修用パテで成形・強化

割れた直後に塗装をやり直すのはNGです。
内部に残った溶剤が影響し続けている可能性があるため、数日以上置いて割れが再発しないかを確認してから再塗装を行いましょう。

塗膜が剥がれる・うまく乗らない場合の対処法

塗料が弾かれたり、乾燥後にポロポロと剥がれてくる…
これは、下地処理の不備やプライマー不足が原因であることが多いです。

対策としては、塗装前に表面を紙やすり(#600〜800)で軽くこする(足付け)ことで、塗料の食いつきが良くなります

また、ABS対応のプライマーやプラスチック用サーフェイサーを塗布することで、塗膜の定着性をアップすることができます。

パーツに皮脂やホコリが付着していると密着力が落ちるので、塗装前に中性洗剤で洗浄またはアルコール拭きするのも有効です。

下地が透ける・色ムラになる時の防ぎ方

塗料を一度に厚く塗って解決しようとすると、塗料が流れたり、溶剤が素材に悪影響を与えるリスクがあります。透けやムラを防ぐためには、以下の点に注意しましょう。

  • 塗料は必ず薄めにし、数回に分けて重ね塗りすることが大切(“薄吹き”が基本)。
  • 下地の色に合った塗料を選ぶ(例:白下地には明るい色が乗りやすい)。
  • サーフェイサーで色の発色と密着性を向上させてから塗装する

このようなトラブルは、事前の準備や塗装手順を丁寧に守ることで大幅に回避可能です。失敗しても落ち込まず、原因を見つけて少しずつ改善していきましょう。

ABS塗装におすすめの道具・塗料一覧

適切な塗料と道具を選べば、安全かつ美しい仕上がりが可能です。
ここでは、ABSに適した塗料・プライマー・ツールを具体的な商品名とともに紹介します。

相性の良い塗料(具体的なメーカー・商品)

ABSへの塗装では、「溶剤が弱めで、素材への浸透力が低い塗料」を選ぶのが基本です。

タミヤ 水性アクリルカラー(ミニシリーズ)

タミヤ 水性アクリルカラーは、ABS素材にも優しい水性塗料で、筆塗りとエアブラシのどちらにも対応しています。乾燥後には耐水性があり、発色も良好なため、美しい仕上がりが得られます。また、塗膜が柔軟で割れにくいため、初心者でも安心して扱うことができるのも大きな魅力です。

GSIクレオス 水性ホビーカラー(新水性ホビー)

GSIクレオスの水性ホビーカラーは、溶剤臭が少なく、環境にも配慮された設計が特徴の水性塗料です。エアブラシとの相性が非常に良く、塗料の伸びも滑らかで、美しい仕上がりが期待できます。タミヤのアクリル塗料に比べるとわずかに乾燥が早く、特に光沢系のカラーバリエーションが豊富な点も魅力です。

△ Mr.カラー(ラッカー系・使用時注意)

Mr.カラーは発色や耐久性に優れたラッカー系塗料で、仕上がりの美しく初心者にも扱いやすい塗料です。

しかし、ABS樹脂に対しては注意が必要です。強溶剤を含むため、塗装時にプラスチック内部へ溶剤が浸透し、時間の経過とともに割れ(クラック)を引き起こすリスクがあります。

どうしてもMr.カラーを使用する場合は、必ず塗料を十分に薄め、エアブラシで「薄く吹く」ことが前提となります。また、1回ごとの塗装後にしっかりと乾燥時間を確保することも重要です。特に応力が集中しやすい接続部や可動部には使用を避けるのが無難でしょう。

割れ防止に使えるプライマー

プライマーは、塗料の密着を高めつつ、素材への浸透を防ぐバリアの役割を持ちます。ABSには「弱溶剤タイプ」や「プラスチック対応」と明記されたものを選びましょう。

タミヤ プライマー(スプレータイプ)

タミヤのプライマーは、プラスチック全般に対応した定番の下地処理剤です。スプレー式のためムラなく均一に塗布でき、仕上がりの精度を高められます。

ABS素材に使用する場合は、薄く吹きかけることで表面を侵すリスクが少なく、安全性の高い下地処理が可能です。

Mr.マルチプライマー(GSIクレオス)

Mr.マルチプライマーは、金属やプラスチックなど幅広い素材に対応できる万能タイプのプライマーです。塗料の密着力をしっかりと高めながらも、塗装面へのダメージを最小限に抑えてくれるため、ABS塗装にも安心して使用できます。

スポイトボトル入りで扱いやすく、筆塗りにも対応しているため、細かいパーツや部分塗装にも便利です。/p>

筆塗り向け・エアブラシ向けの製品

ABS塗装では、塗装方法と使用塗料の相性も重要です。
それぞれに適した塗料を使うことで、仕上がりや作業効率が格段に向上します。

用途製品名特徴
筆塗りにおすすめタミヤアクリルダマになりにくく発色も良好。筆の運びが滑らかで、初心者でも扱いやすい。
ガイアノーツ エヴォカラー(水性)塗膜が柔軟でヒビ割れしにくく、伸びが良い。発色が濃く、少量でもしっかり色が乗る。
エアブラシにおすすめGSIクレオス 水性ホビーカラー粒子が細かく吹きムラになりにくい。薄吹きでも色付きが良く、ABS塗装に最適。
ファレホ(VALLEJO) モデルカラー・ゲームカラー水性アクリルの中でも特にABSとの相性が良く、欧州でも人気。乾燥後は耐久性も高い。

ABS塗装は素材特性への理解と、「適切な塗料・道具・手順」の3つが揃えば、十分に成功できます。

今回紹介した塗料・プライマーを活用して、安全で美しい仕上がりを目指してみましょう。

よくある質問(FAQ)

ABS樹脂にはどんな塗料を使えばいいですか?
「ラッカー系」または「ウレタン系塗料」が使えますが、ラッカー系は薄吹き推奨です。アクリルやエナメル系の方が安全に作業できます。
なぜABSは塗装が剥がれやすいのですか?
ABSは表面が滑らかで塗料の食いつきが悪く、さらに曲げなどの応力が加わると塗膜が割れやすい性質があります。そのため、塗装前の下地処理が重要になります。
サーフェイサーはABSに使っても大丈夫ですか?
基本的には使用可能ですが、強溶剤系は避け、弱溶剤系のサーフェイサーを選びましょう。
塗装後にヒビが入ったり、パーツが割れたりする原因は?
主な原因は、溶剤の影響や塗膜収縮によって発生する応力集中です。特に厚塗りや乾燥不足に注意が必要です。
ABSパーツの塗装はやめた方がいい?
正しい手順を守れば塗装可能です。ただし、パーツの用途や強度を考慮し、必要に応じて塗装しない判断をすることも大切です。
筆塗りでABSを塗装できますか?
可能ですが、ラッカー系は避けて水性アクリルやエナメル系塗料を使うのが無難です。特に筆塗りでは塗料の選択が割れ防止に直結します。

まとめ:ABS塗装のポイントは「溶剤対策」と「手順管理」

ABS塗装はリスクがある分、正しい知識と丁寧な作業が不可欠です。焦らずに手順を守り、適切な道具と塗料を選ぶことで、割れを防ぎながら美しい仕上がりが可能になります。

プラモ製作のクオリティを高めるためにも、ぜひ今回紹介したポイントを活用してみてください。