各種サーフェイサー

プラモデル制作においてよく耳にする「サーフェイサー(通称サフ)」。使ったことはあるけれど、「なぜ必要なのか」「どう使えば効果的なのか」が曖昧なままの方も多いかもしれません。

しかしサーフェイサーは、塗装前の下地処理として非常に重要な工程。小傷や表面の粗を可視化し、塗料の定着性を高めるなど、完成度に直結する役割を担います。

本記事では、以下の点について解説をします。

  1. サーフェイサーの基礎知識
  2. 適切な選び方
  3. 使用手順
  4. よくある失敗と対策

塗装の仕上がりをワンランク引き上げたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

サーフェイサーとは?その役割と意味

サーフェイサー(通称サフ)とは、塗装前にプラモデルの表面へ吹き付ける下地処理用の塗料です。主にラッカー系や水性タイプがあり、スプレーやエアブラシを使って塗装します。

サーフェイサーの主な役割は、以下の3つです。

  1. 微細なキズやヒケの視認性向上
  2. 塗料の定着性向上
  3. 下地色の統一と透け防止

サーフェイサーを吹き付けることで、素地のままでは見逃しがちな微細なキズや、パテ埋めの処理漏れが明確になり、事前の修正がしやすくなります。

また、表面の微小な凹凸を均一に整えることで、塗料の密着性が向上し、仕上がった塗膜が剥がれにくくなります。特に、ツルツルとしたプラスチック表面には、サーフェイサーが接着の足がかりとなり、塗装の定着をサポートします。

さらに、異なる色や素材のパーツを均一な下地色で覆うことで、上塗りの発色が安定し、色ムラや透けの発生を防ぐことができます。こうした下地処理を行うことで、最終的な塗装の質感が格段に向上します。

このように、サーフェイサー処理を施すかどうかで、完成後の見た目や仕上がりに大きな差が生まれます。作品のクオリティを一段高めたい場合には、欠かせないプロセスと言えます。

サーフェイサーの種類と選び方

サーフェイサーにはいくつかのタイプがあり、使用目的や塗装環境、道具に応じて適切なものを選ぶことが重要です。

種類別の特徴

種類特徴向いている人・用途
ラッカー系乾燥が早く、下地への密着性が高い。
模型用として最も一般的。
仕上がりを重視したい方
水性タイプ溶剤臭が少なく、室内作業でも扱いやすい。
安全性が高い。
換気が難しい環境や、安全性を重視する方
瓶タイプ
(エアブラシ用)
エアブラシ専用の原液タイプで、シンナーで希釈して使用。
コスパが良く、大量に使う場合に向く。
エアブラシ使用者、コスパ重視の方
スプレータイプ道具不要でそのまま使える。
手軽で扱いやすく、広い面にも均一に塗布可能。
初心者や時短で作業したい方

色別の用途と特徴

特徴・用途向いている塗装例
グレー最もスタンダードで汎用性が高い下地色。
キズやヒケが見えやすく、発色も安定。
迷ったときの基本色。
全般、色選びに迷ったとき
ホワイト明るい色やパステルカラーなど、発色の弱い塗料を鮮やかに見せたい場合に適している。
暗い下地だと色が沈むため注意。
白系、パステル系、明るい色
ブラックメタリック系や陰影塗装の下地に最適。
光を吸収しやすいため、色に深みを与える効果がある。
メタリックカラー、黒立ち上げ、シャドウ塗装
イエローレッドやオレンジなど暖色系の発色を補強。
グレーでは沈む色に対して効果的な中間色として使用される。
レッド、オレンジ、暖色系全般
ピンクレッド系をより鮮やかに見せたいときに使用。
赤の発色を明るく引き立てる。
鮮やかな赤、ピンク系塗装
ブルー青や紫など寒色系の発色をサポート。
やや落ち着いた、クールな印象の仕上がりに。
ブルー、パープル、寒色系
シルバーメタリック塗装やキャンディ塗装の下地に使用。
光を反射しやすく、透明塗料と組み合わせることで高い光沢感を演出できる。
メタリック塗装、キャンディ塗装

初心者には、扱いやすい「スプレータイプのグレー」がおすすめです!

サーフェイサーを吹くタイミングとコツ

サーフェイサーの使用タイミングは、基本的に「表面処理(ヤスリがけや合わせ目消し)」がすべて完了した後、塗装工程に入る直前が適切です。

特に、パテによる埋め処理やキズの修正を行った箇所には、サーフェイサーを吹き付けることで仕上がり状態を視覚的に確認できます。下地が均一な色になることで、処理の甘さや細かな凹みが浮き彫りになり、再調整の必要性を判断しやすくなります。

この「可視化」の工程を挟むことで、塗装後の仕上がりに大きな差が出るため、丁寧な下地作りを心がけたい方には欠かせないステップです。

サーフェイサーの使い方【初心者向けステップガイド】

サーフェイサーの効果を最大限に引き出すためには、正しい手順を踏むことが重要です。以下は初心者の方でも実践しやすい基本的なステップです。

  1. 下準備(洗浄・脱脂)
  2. 固定する
  3. サーフェイサーを吹き付ける
  4. 乾燥させる

下準備(洗浄・脱脂)

塗布前には、必ずパーツの洗浄と脱脂を行いましょう。
表面に皮脂やホコリが残っていると、サーフェイサーや塗料の密着性が低下します。

  • 中性洗剤を使ってしっかり洗浄

無水エタノールを使用して脱脂処理を行うのも効果的です。

固定する

吹き付け作業中に手で触れてしまうと、塗膜にムラが出る原因となります。
塗装用のクリップ(持ち手)や持ち棒を使い、しっかりとパーツを固定しましょう。

サーフェイサーを吹き付ける

塗布は「薄く、数回に分けて」が基本です。
一度で厚塗りしようとすると、ムラや垂れの原因になります。

サーフェイスの吹き方の違い

  • スプレータイプ:缶をパーツから約20cm離し、軽くスプレーするように吹きつけます。2~3回に分けて重ねると均一な仕上がりになります。
  • エアブラシ用(瓶タイプ):指定の濃度に希釈し、一定の距離と速度でまんべんなく吹き付けます。特に希釈率と空気圧の調整が仕上がりに影響します。

乾燥させる

塗布後はしっかりと乾燥させます。

  • 表面乾燥はおおよそ30分〜1時間程度

その後、数時間〜半日ほど放置すると安心して次工程(塗装や修正)に移れます。

よくある失敗とその対処法

サーフェイサーは下地処理に欠かせない工程ですが、慣れないうちは思わぬ失敗もつきものです。以下に、よくあるトラブルとその対策をまとめました。

厚塗りでモールド(ディテール)が埋まってしまった

  • 原因:一度に多量の塗料を吹きつけたことによる塗膜の過剰な厚み。

サーフェイサーは薄く何度かに分けて重ね塗りするのが基本です。軽く吹き付ける「捨て吹き」を1回行い、乾燥を挟みながら少しずつ重ねることで、繊細なモールドを残したまま下地処理ができます。

ムラができた/表面がザラついた

  • 原因:缶内の塗料が十分に攪拌されていない、あるいは吹き付ける距離や角度が不安定。

スプレー缶は使用前にしっかりと1〜2分振り、塗料とガスをよく混ぜましょう。吹きつけ時はパーツから約20cmの距離を保ち、一定の速度で水平に動かすのがコツです。風が強い場所や湿度の高い日は作業を避けると、より安定した仕上がりになります。

塗料がはじかれる(弾いて定着しない)

  • 原因:脱脂不足や油分の残留により、塗膜が弾かれてしまう。

サーフェイサー前の洗浄・脱脂は必須です。中性洗剤や無水エタノールを使用し、表面の皮脂や埃をしっかり除去しておきましょう。

サーフェイサー後のチェックポイント

サーフェイサー塗布後は、乾燥を十分に待ってから下記の点を確認しましょう。

  1. 小さなキズやヒケ(沈み)が残っていないか
  2. パテ処理や合わせ目消しが完全に仕上がっているか
  3. 表面にザラつきやムラがないか

問題があれば、やすりがけで再調整し、再度サーフェイサーを塗布すれば修正可能です。仕上がりの精度を高めるには、この「チェック&修正」の工程が非常に重要です。

サーフェイサーは単なる下地塗料ではなく、完成度を左右する大切なプロセスです。丁寧な施工を心がけることで、その後の塗装がグッと映えるようになります。

よくある質問(Q&A)

サーフェイサーは必ず使わなければいけませんか?
必須ではありませんが、完成度を高めたい場合は強く推奨されます。
特に塗装仕上げを前提とする場合、サーフェイサーを省くと下地の凹凸やキズが目立ちやすくなり、塗料の密着性や発色にも影響を与えます。仕上がりにこだわるなら、下地処理として取り入れるべき工程です。
筆塗りでサーフェイサーを使うことは可能ですか?
可能ですが、あまり推奨されません。
筆塗りだとどうしても塗膜にムラが出やすく、均一な仕上がりが難しくなります。やむを得ない場合を除き、スプレーまたはエアブラシでの塗布が理想的です。
サーフェイサーの匂いが気になります。どう対策すればよいですか?
必ず換気を行い、防毒マスクや塗装ブースを併用しましょう。
ラッカー系サーフェイサーは揮発性が高く、刺激臭が強いため、室内で使用する際は換気設備の整った環境が不可欠です。匂いが気になる方には、水性サーフェイサーや無臭タイプの製品も選択肢として有効です。
100円ショップのプライマー(プラサフ)は使えますか?
簡単な用途であれば使用可能ですが、精度を求める模型製作には不向きです。
100均の製品は手軽さが魅力ですが、粒子の粗さや密着性、仕上がりの均一性などにバラつきがあることも。精密な表現を求める場合や大切な作品には、模型用として開発された専用サーフェイサーの使用をおすすめします。

必要性・使い方・代替品に関する疑問は多いですが、基本を押さえておけばサーフェイサーは心強い味方になります。

まとめ:サーフェイサーは塗装クオリティを引き上げる“ひと手間”

サーフェイサーは、ただの下地処理ではありません。
小さなキズの可視化や塗料の密着向上、発色の安定化など、完成度を左右する重要な役割を担っています。

初心者の方はまず、スプレータイプのグレーサフから試してみるのがおすすめ。
慣れてきたら色や種類を変えて、自分のスタイルに合ったサーフェイサー選びを楽しんでください。

この“ひと手間”を惜しまないことで、あなたの作品はさらに魅力的に仕上がるはずです。
ぜひ、次の制作からサーフェイサーを取り入れてみてくださいね!