

FRBがテーパリングを始めると、株価が下落するってホントですか?
こんな人のための記事です。
世界の最新金融ニュースを配信するBloombergが、2021年1月にこんな記事を配信しました。
米シカゴ連銀のエバンス総裁は7日、米連邦準備制度理事会(FRB)の資産購入について、「経済が好調でもインフレが不十分で、実際に資産購入という点でさらなる行動が必要な状況になることはあり得る。そういうケースでは、購入資産の年限構成をいずれかの方向に変更することもあり得る」と語った。
米連邦準備制度は26、27両日に今年最初の連邦公開市場委員会(FOMC)の会合を開催する。
いずれもFRB(米国の中央銀行)によるテーパリングの時期について言及したニュースです。
この記事では、
- そもそも「テーパリング」って何?
- 2021年以降の株式市場はどうなる?
- 予測できない未来にどうやって備えるの?
という内容について、解説をします。

コロナ禍のバブル相場に乗り遅れた人やこれから投資を始める人はどうしたらいいのか?一緒に考えていきましょう!
テーパリングって何?
テーパリングとは、量的金融緩和政策における金融資産の買入額を段階的に縮小することを指します。
一般に量的金融緩和政策(量的緩和)は、リーマンショックやコロナショックのような大きな経済危機に直面した時に、景気や物価を下支えするため主要国の中央銀行(日銀やFRBなど)により行われる金融政策です。
コロナショックなどの実際の経済危機では、量的緩和として政策金利の引き下げや国債の買取額の増加が行われ、市場への大量の資金供給(銀行からお金を借りやすくする)が行われました。
これにより2020年3月に一時33%も下落した株式市場は急速な回復を示し、その後の日経平均では31年ぶりに2万8,000円の高値を記録するなど、バブル相場とも取れる高騰ぶりが話題となっています。
8日の東京株式市場で日経平均株価が続伸し、前日比648円90銭(2.4%)高の2万8139円03銭で取引を終えた。終値で2万8000円台に乗せるのは1990年8月以来、約30年5カ月ぶり。前日の米市場でダウ工業株30種平均など主要株価指数が最高値を更新した流れを引き継いだ。米国でバイデン政権が正式に発足する見通しとなり、追加の経済対策などへの期待が高まっている。東京市場でも半導体や非鉄など景気敏
株式市場と実体経済との乖離
バブル相場とも受け取れる株式市場の高騰とは裏腹に、実体経済は未だコロナの収束は見えていません。
2021年1月には新型コロナ感染の急増を受けて、米国の特に外食産業を中心とした雇用削減が行われれ、新型コロナ感染拡大前より雇用者数が1,000万人を下回る状況となっています。
米雇用者数は2020年12月に8カ月ぶりに減少した。新型コロナウイルスの感染急増が米経済への重しとなっていることを如実に示した。
こうした中、主要国の中央銀行は引き続き量的緩和の継続を発表し、株式市場は2021年も安定するといった見通しが立てられている一方、多くのエコノミストがバブル相場の崩壊を懸念しており、その発端になると予想されるテーパリングに早くも注目し始めています。
エコノミストによる今後の株式市場の予測
冒頭で紹介したBloombergのニュースでは、質問に回答した40人のエコノミストのうち88%が、今後FRBによるテーパリングが実行されると予想しています。
そして、そのうちの35%のエコノミストが、FRBの量的緩和の出口戦略として2022年の第一四半期(年始)から7〜12ヶ月の間で段階的な引き締めを行うと予想しています。
量的緩和の引き締めを行うとどうなる?
量的緩和を引き締めるとは、これまで市場に資金を流通させるために購入していた国債の買取量を少なくすると言うことです。
買取量を少なくすると、国債の利回りに影響ができます。
国債の利回りは中央銀行がどれくらい国債を買っているかによって左右されるため、これまで大量に購入していた国債の買取量を少なくすると、国債の価格は下がり、利回りは上がることになります。
2021年1月の国債の利回りは、約1.08%と昨年8月より少しずつ上昇しています。
エコノミストたちの予想では、テーパリングを始めることによりこの利回りはさらに上昇し、新型コロナ感染流行前の約1.8%まで戻ると懸念しています。
金利が戻るとどうなる?
金利が戻ると、株価に影響がでます。
アメリカの代表的な指数であるS&P500の平均利回りは1.5%です。
現在の米国債の利回りは1%前後ですが、量的緩和の引き締めによりこの1.5%を超える可能性が出てきました。
国債は、リスクフリーの金融商品です。
一方、配当金も少なくPERも高いグロース株は、リスクの高い金融商品です。
量的緩和の引き締めにより、国債よりリスクも高く利回りも低いグロース株(特にハイテク株)が売られることになるため、株価は下落すると予想されます。
予測できない未来にどうやって備える?
FRBによるテーパリングは過去に複数回実施されています。
最近ではリーマンショック後の2013年・2017年にテーパリングによる株価の下落が懸念されていました。
一時的に市場は混乱するものの、世界経済は未来に向かって右肩上がりで良くなっているため、結果として株価も上昇を続けています。
とはいえ、今回の新型コロナ流行による量的緩和と出口戦略であるテーパリングの結果がどうなるかは誰にもわかりません。
量的緩和によりバブル相場となった株式市場が、実体経済に合わせて暴落する可能性もありますし、株式市場は未来を予想しているため実体経済とは異なると予想し、暴落はないとの見方もできます。
いずれにしても個人投資家にできることは、いつ暴落が来ても大丈夫なように、ポートフォリオを通常時と同じように整え、老後資金のために長期積立を続けるぐらいのことしか出ません。
周りの声に惑わされず、自らのルールを遵守しましょう。
まとめ
テーパリングによる株式市場への影響について解説をしました。
テーパリングは、経済危機を下支えする量的緩和の引き締めを行う中央銀行による金融政策です。
引き締めを行うことにより、国債の利回りがコロナショック前に戻ることが予想されています。
そのため、利回りの低い株価の株式から国債へ資金の移動も予想され、結果として株式は下落します。
多くのエコノミストたちは、米国のテーパリングは2022年の年始から開始されると予測しており、バブル相場の終了を市場は懸念しています。
これらの未来に備えて、高騰している株式ばかりに目をむけるのではなく、安全資産の国債や株式と反対の動きをする可能性のある金などのコモディティの配分を多くするなど、ポートフォリオの見直しが必要です。
未来は誰にも予測できないので、目減りしても大丈夫な金額も把握しつつ、来るべき未来に備えておきましょう。